📖前回までのあらすじ
前編を読んでいない人へ、30秒でおさらい。
📌 前編ダイジェスト
- とある重要な情報をまとめたExcelに「開くパスワード」をかけ、その鍵を失念。
- いま一般人が使える最強クラスのAI論理モデル(Claude Opus 4.8)に頼り、約4万通りの総当たりに挑むも「NO MATCH」。
- 正体は ()。中に答えは無く、正しい鍵が無ければ数学的に開けない=AIでも「推測」しかできなかった。
(まだの方は 前編はこちら からどうぞ。)では、敗北の中で湧いた疑問に答えていきます。
06🚀 で、最新AIで暗号はどうなるの?
「AIが進化したら全部破られる」は、半分ホントで半分ウソ。
多くの人が気になるところ。結論から言うと、AIの進化=暗号崩壊、ではありません。 攻める側・守る側、それぞれで起きていることを整理します。
💥 実話:公開数日で“強すぎ”て止められたAI
これは絵空事ではありません。2026年6月、Anthropicの最上位AI Claude Fable 5(および上位級の Mythos 5)が、 公開からわずか数日(3日ほど)で「モデルは利用できません」に。 米政府の安全保障上のによる一時停止だったと報じられました(Anthropicは「誤解にもとづく」として早期復旧を表明)。 くわしい顛末はこちらの体験記にまとめています。
😨 なぜ“強すぎるAI”は警戒されるのか
- サイバー攻撃への悪用:高度なAIは、攻撃の手口づくりや危険なコード生成を“手伝えてしまう”恐れがある。
- 「」への懸念:専門知識のないド素人でも、強力な攻撃の道具に手が届いてしまうのでは——という心配。これが規制・制限の大きな動機とされます。
- ネット上では「銀行のような堅牢なシステムすら破られるのでは」といった臆測・話題も飛び交いました(※あくまで懸念であり、確認された事実ではありません)。
⚠ AIで「進化してしまう」攻撃
- パスワード推測の高速化・賢さ:流出したパスワードの傾向をAIが学び、「人間が作りがちな文字列」を優先的に当てにくる。
- ・詐欺の巧妙化:本物そっくりのメールや偽サイトをAIが量産。AIと詐欺の記事でも触れています。
- つまりAIは、「弱いパスワード」や「うっかり」を突くのが、どんどん上手くなる。
✅ それでも「変わらない」守りの強さ
- 強い暗号そのものは破れない:AES-256の数学的な強度は、AIが賢くなっても1ミリも下がらない。
- 長いは正義:長ささえ十分なら、AIに傾向を読まれても総当たりは終わらない。
- 結局、攻防の主戦場は「人間の油断」。暗号の強さより、使い方とパスワードの質が勝負を決める。
では、「銀行のシステムすら破られる?」という臆測の答えは——。前章までの結論を思い出してください。 AIがどれだけ賢くなっても、AES-256のように正しく実装された強い暗号そのものは破れません。 AIが本当に得意なのは、「弱いパスワード」「古い暗号」「設定ミス」「人間の油断」を突くこと。 だから——皮肉なことに、最強のAIが現れるほど、私たちが今日できる地味な備え(最新形式+長いパスワード)の価値が上がるのです。
強いAIが来るほど、弱い設定が狙われる。
だからこそ、“強い設定”が効く。
🔮 「量子コンピューター」はどうなの?
未来の話としてよく出る。これは万能の暗号破りではありません。 確かに などの(ネットの通信などで使う)は将来おびやかされる可能性がありますが、 今回のような AES-256()に対しては、量子向けの高速化()を使っても実効的な強さが半分になる程度。 AES-256は半分でも128ビット相当——つまり、まだまだ安全と考えられています。
AIも量子も、魔法じゃない。
強い暗号は、ちゃんと強い。
07🪤 ただし「外せるロック」も存在する
全部が全部、鉄壁なわけじゃない。ここ、誤解しがち。
今回の僕が詰んだのは、「ファイルを開くパスワード(=中身を暗号化)」だったから。 一方で、同じ「パスワード/ロック」でもかんたんに外せるタイプがあります。混同しないように、線引きしておきましょう。
🔓 比較的かんたんに外せる(中身は暗号化されていない)
- シート保護・ブック保護:編集を禁止するだけ。中身は暗号化されていないので、解除はかなり容易。
- 「読み取り専用」パスワード(書き込みパスワード):開くだけなら鍵いらず。編集制限だけ。
- 古い形式(.xls / .doc・Office 2003以前):暗号が弱く、現在のPCでも短時間で破られやすい。
- PDFのコピー禁止・印刷禁止:中身の暗号化ではなく“制限フラグ”。外れやすい(→ 番外編へ)。
🔒 本気で固い(中身ごと暗号化)
- 「ファイルを開くパスワード」(最新のxlsx/docx):AES-256で中身ごと暗号化。これが今回の正体で、忘れたら基本アウト。
ネットで見かける「Excelパスワード解除!」の多くは前者(シート保護など)の話。 後者の「開くパスワード」を忘れたら、魔法の解除ボタンは無い——これが、身銭ならぬ身時間を切って学んだ現実でした。
08📕 番外編 — PDFの「コピー禁止」は、わりとゆるい
よもやま話。Office暗号にボコられた僕にも、勝てた相手はいた。
ここでちょっと、よもやま話を。AES-256にコテンパンにされた僕ですが、実は以前、逆にAI(Claude Code)にあっさり外してもらったロックもあるんです。それが——PDFの「コピー禁止」。
仕事で受け取ったPDF。読めるのに、文字を選択できない・コピペできない。地味にイライラするやつです。 でもこれ、中身を暗号化しているわけではありません。「コピーしないでね」という“制限フラグ(お願いの立て看板)”が立っているだけ。
そこで (AIにコマンドを任せて作業させる開発ツール)に、こうお願いしました。 「このPDFのコピー制限フラグを外して、再保存して」。 AIは というPythonのPDF部品を使い、ものの数分で制限を解除したPDFを出力。あれだけ固かったExcelとは大違いの、あっさり完落ちでした。
🧭 この番外編の教訓
- 「ロック」と「暗号化」は全くの別物。前者は立て看板、後者は金庫。見た目が似ていても、固さは桁違い。
- 大事な中身は、必ず「暗号化(開くパスワード)」で守る。コピー禁止フラグだけでは守りにならない。
- 解除の操作は自分が正当に扱う権利のあるファイルにのみ。他人の著作物やライセンス保護された資料の制限を無断で外すのはNG。
PDFをドラッグ&ドロップ一発で“解放”するツールをAIと一緒に作った顛末は、別記事にくわしくまとめています。
09🛡 痛恨の教訓(量子時代でも、二度と詰まない)
この実録でいちばん伝えたい、たった数行。
前編の要点まとめのとおり、最新のOffice形式+12文字以上の複雑なパスワードなら、量子時代でも中身は守れます。 問題は、その鍵を自分で忘れたら、最強AIでも助けてくれないこと(=今回の僕)。だから、守りと“詰み回避”をセットで。
🧭 量子時代でも安心の4か条
- 最新のOffice形式(.xlsx / .docx)を使う:古い .xls / .doc は暗号が弱く危険。今すぐ最新形式へ。
- 12文字以上の複雑なパスワードにする:短い単語や誕生日はNG。無関係な単語をつないだ長い合言葉に。長さこそ最強の防御。
- 鍵は管理アプリ+控えで二重に:パスワード管理アプリで一元管理し、重要な鍵は紙など別の場所にも残す。
- 暗号化前の元データをバックアップ:最後に救うのは、たいていバックアップ。鍵を忘れても作り直せる。
強い暗号は、僕たちの大事な情報を守る頼れる味方です。ただし——鍵を無くした持ち主にも、容赦はしない。 その固さを「敵」ではなく「味方」にするために、上の4か条をどうか。
暗号は、味方にすれば最強。
鍵の管理だけは、抜かりなく。
10🌙 オチ — で、中身はどうなった?
ヒーローは、最後にちょっとだけ賢くなりました。
完璧な施錠 → 鍵を忘れる → 最強AIに泣きつく → 4万通り総当たり →「NO MATCH」→ ズコー。 お気づきのとおり、例のExcelは、いまも固く閉じたまま。中の重要な情報は、暗号の向こうで眠り続けています。
結局どうしたか。別に取っておいた元データをかき集め、地道に作り直しました。地味で、ちょっと泣けます。 でも今は、パスワード管理アプリとバックアップという相棒を手に入れたので、もう同じ過ちは犯しません。……たぶん。
「最強AIなら何でもできる」と思っていた僕が学んだのは、AIにも、できないことがあるという事実。 そしてそれは、悲しいことではなく——僕たちの情報がちゃんと守られている、という心強い証でもあったのです。
最強AIでも開けない。
それは、あなたの情報が安全な証拠。
※ 本ページは、当サイト運営者個人の体験を、個人情報(実際のファイル内容・氏名・正確なパスワードなど)をすべて伏せ・一般化して、おもしろおかしくまとめたものです。 暗号やセキュリティの説明は、一般的な理解を助けるための概要であり、すべての環境・バージョンに当てはまる保証はありません。総当たり時間の数字は仮定にもとづく概算イメージです。 ファイルの制限解除やパスワード解析は、必ず自分が正当な権利を持つファイルに対してのみ行ってください。他人の著作物やライセンスで保護された資料の制限を無断で回避する行為を推奨するものではありません。 Fable 5・Mythos 5 の停止に関する記述は2026年6月時点の報道にもとづくもので、「銀行のセキュリティを破る」等の能力に関する記述は確認された事実ではなく、世間で語られた懸念・臆測として紹介しています。